楽に速く走るコツは、体幹と重心を意識したランニングフォームにある

ランニング愛好家の皆さん、こんばんは。
フォトファンタジスタ×シティランナーのw.aokiです。

今回はランニングフォームについてお話しようと思います。
最初にお伝えしておきますが、今回の記事は長くなりますのでお時間のある時にご一読いただくことをお薦めします。

TVなどでマラソンや駅伝を見ていると、解説者が『腰高の綺麗なフォーム』とか『体幹が安定したフォーム』、『力感のない滑らかなフォーム』などとランナーのフォームを分析している様をよく耳にしますよね。
そしてこれらはおおよそ、速いランナーに対して掛けられている言葉ということもお気付きかと思います。
また、これらのフォームで走っているランナーは、楽に走っていているようにも見えますよね。
解説者によって観点は多少違えどこれらには共通するポイントがあり、今回はその部分を前半にお話し、後半はどうすればこのようなフォームが身に付けられるのか(近付けるのか)をお話したいと思います。
まずは上に挙げた3つのフォームについて説明していきます。

👟楽に速く走れる3つのフォームのポイント


① 腰高のフォーム

これは、簡単に言うと骨盤が前傾しているかどうかが顕著な判断ポイントです。
骨盤が前傾していると何が起こるかと言いますと、重心が身体の前方へ移動するため重心線が前に傾きます。
そのため、自然と脚が前に出易くなり前への推進力が働きます。
これは読んで理解するよりも一度試していただく方が分かり易いと思います。



百聞は一見に如かず。
直立してからお尻を引き上げつつ腰を前方に押し出すようにしてみてください。
身体が前に倒れそうになると思います。
つまり、足ではなく腰で前傾姿勢を作り出すことで前への推進力を生み出し、直立した姿勢で太腿の大きな筋肉を使って前に脚を振り出すよりも楽に前進できるようになるということです。
これが腰高のフォームの特徴の正体になります。
ちなみにフォアフット走法の方に多いランニングフォームもこちらです。(恐らく骨盤が前傾して重心が前に行っていないとフォアフットで走れないと思いますが)

この腰高のフォームを実現するには、以下の②とも関連してきますが体幹の筋肉が重要になってきます。
と言うのも、体幹の筋肉(特に腰に近い腸腰筋)が弱いと骨盤を前傾にしたままの姿勢を長時間維持することが難しいためです。
従って、腰高のフォームを身に付ける場合はまずは体幹の筋肉を鍛える必要があるでしょう。


② 体幹が安定したフォーム

これは、簡単に言うと前から見た時に状態の横揺れが大きいかどうかが顕著な判断ポイントです。
速いランナーの特徴の1つに、体幹の筋肉を上手く使って走っている点が挙げられます。
この体幹の筋肉というのが何処から何処までを指すのかは諸説ありますが、一般的には腹直筋や背筋、大腰筋や腸腰筋辺りなど、お腹や背中・お尻周りの筋肉を指すことが多いです。
この体幹が安定していればいるほど走行時の姿勢が安定し、身体が跳ねる時の上体の横揺れを少なくできるので真っ直ぐに走れます
一言で例えると、身体の軸がしっかりしているということです。

体幹の筋肉が弱いランナーの場合、脚の筋肉を中心に走ります。
そうするとどうなるかと言いますと、上体が左右に横揺れし易くなります。

長い距離である程、1歩1歩が真っ直ぐである方が効率が良く進める訳ですが、横揺れしているということは言うなれば若干ではありますが斜め前に進んでしまっているということになります。
つまり物凄く小さな単位ではありますが、ジグザグに進んでいるということです。
とは言うものの1歩1歩が積み重なって長距離走は成り立つため、この横揺れをできるだけ制御して可能な限り真っ直ぐに前へ進むことが、速く走るための早道でもあります。
そのため、できる限り体幹の筋肉を鍛えてこの横揺れを無くす方が得策だと思います。

また、体幹を鍛えて安定させるもう一つの目的として、怪我の防止が挙げられます
これは①とも関係してくるのですが、体幹の筋肉を強化すると所謂『腰高のフォーム』で長時間走ることができるようになります。(正確には骨盤の前傾姿勢を長く保てるようになります
こうするとどうなるかと言いますと、重心が身体の前方に移動して足の着地が身体の真下またはやや後方になり、着地した時に頭から足までが1本の線のようになるため、体幹の大きな筋肉で衝撃を吸収することができるので膝や脹脛などへのダメージを軽減できます。
脚の筋肉を中心に走っている場合はどうしても身体の前方で足が着地することになり、その分膝や脹脛などのダメージが多くなるため、怪我のリスクが大きくなるという訳です。


③ 力感のないフォーム

これは、簡単に言うと肩に力が入っているかどうかが顕著な判断ポイントです。
先日、2022年1月30日の大阪ハーフマラソンで現役を引退された福士加代子さんが分かり易いのですが、肩が落ちていて力が抜けているように見えますよね。
元々いかり肩ですということであれば力が抜けていても方が上がっているように見えるというのは仕方がないのですが、そうでない場合は基本的に肩の力が抜けている場合は肩は何もしていない時と同様落ちているように見えます。



短距離ランナーの場合は全身の筋肉をフル稼働して短い距離を走り切るため、当然肩にも腕にも力が入るのですが、長距離ランナーがそれをやってしまうと無駄に消耗するだけになります。
マラソンを含め長距離走の基本に、ランニングエコノミーという考え方があります。
これは、長い距離を速く走るために、どれだけ無駄なエネルギーの消費を抑えて効率良く走れるかという考え方です。
当然ですが筋肉を緊張させるにはエネルギーが要りますし、心臓を動かすにも脚を動かすにも体幹の筋肉を動かすのにもエネルギーが要ります。
できるならば、長距離を走るには無駄とも言える肩や腕の”力み”で使われるエネルギー消費は抑えて、心臓や脚、体幹に回したいですよね。
故に肩から腕に関してはできる限り力を抜くように心掛けてください。

ここで腕の力を抜いたら腕が振れないのではという疑問が出てくると思います。
これは上でお話した②の体幹の安定とも関係してくるのですが、実は体幹の筋肉を使って走ることができている場合には、腕に力を入れなくても振子の原理で或る程度は勝手に腕が振れます。
正確に言えば胸(正確に言えば腕の付け根辺り)が左右に振れていて、腕はその動きに付いてきていることになるのですが。
そもそも走る動きは振子のようなもので、片方の足が前に出ている時は、反対側の胸が前に出ていますよね。
故に、体幹を安定させてしっかりと手足の振子運動ができていれば、自然と腕は必要な分だけ振れるのです。
勿論短距離走者のように腕の筋肉も使って前に進む必要がある競技はまた別の話になるのですが、長距離を走ることに限って言えば、安定した姿勢(フォーム)で走ることができている場合は、キツイ上り坂でもない限りは意識して腕を振ろうとしなくても大丈夫です。
後は無駄な力を入れない程度に手を握り、肘は自分が走り易い分だけ曲げてあげれば力感のないフォームが完成します。

👟楽に速く走れるフォームを身に付けるには

さて、前半ではマラソンや駅伝で見る速いランナーに多いランニングフォームの特徴についてお話しました。
ここからは、これらの所謂ランニングエコノミーが高いフォームはどのように身に付けることができるのかについてお話いたします。
まずは上でお話した3つのフォームのポイントからおさらいしましょう。

1. 腰高のフォーム:骨盤の前傾により重心が前方に移動するため、効率良く進める
2. 体幹が安定したフォーム:姿勢が安定しているため、特に上半身の横揺れが少ない
3. 力感のないフォーム:肩や腕に無駄な力が入っていないため、エネルギーロスが少ない

まとめると、体幹の筋肉を鍛えることで安定した姿勢を身に付け、骨盤を前傾させた状態を保つことで前への推進力を得る
それに加えて肩や腕に力を入れずにエネルギー消費を抑え腕振りは脚の動きに対する振子の延長と意識して腕の付け根辺りが振れていることに留意する。
と言ったところでしょうか。

まずは体幹の筋肉を鍛える必要があり、そこを鍛えた後に他の部分を意識して伸ばしていくことが最も自然な流れとなりそうです。
では、順を追って見て行きましょう。

① 体幹部分の筋肉の強化

体幹の筋肉と言ってもとても多くの種類があります。
そもそも体幹の範囲自体も割と曖昧なところがあり、太腿や脹脛・肩周辺の筋肉も体幹という方も居れば、胸から下のお腹や背中と股関節周辺のみを指していることもあります。
後者に関してはインナーマッスルと範囲が被る部分もありますが、例えば腹直筋(巷で腹筋と言われている鍛えている人は6つに割れているあれ)はインナーマッスルではありません。
故にここでは、体幹の筋肉でも長距離を楽に走るためのフォームを形成する際に重要な筋肉のみに的を絞って鍛えましょう。
中でも以下の3つの筋肉を中心に鍛えると効果的です。

● 腸腰筋

腸腰筋は、大腰筋・小腰筋・腸骨筋の3つの筋肉の総称で、背骨の肋骨の下の辺りから脚の付け根辺りまでを結ぶ、表面には出ていないインナーマッスルの一部です。
上半身と下半身の動きを連動させる上では生命線とも言われ、長距離走だけでなく運動において非常に重要な筋肉とも言われています。
坂道や階段のダッシュからプライオメトリクストレーニングまで幅広いトレーニング方法が提唱されていますが、最も簡単で効果的と私が思っているのがスタンディング・ニー・レイズです。



● 大殿筋

一言で言いますとお尻の筋肉です。
この臀部の筋肉が実は重要になってきます。
と言うのも、着地した足を素早く引き上げる際に使う筋肉であるためです。
短距離もそうですが、長距離においても接地した足を出来るだけ早く引き上げて前に進める方が速く走れますよね。
この時の一連の動作に絡んでくること、また骨盤が前傾した姿勢で走る際には着地した時の衝撃を吸収する役割も担ってくれるので、ここが発達しているととても重宝します。
このお尻の筋肉も色々と鍛え方がありますが、私がお薦めしたいのは以下のヒップ・レイズです。
これを1日2~3セット繰り返すと効果的だと思います。



● ハムストリングス

ハムストリングスとは、おしりの付け根から膝裏までに跨る太腿の裏側にある筋肉で、大腿二頭筋・半膜様筋・半腱様筋の3つの筋肉の総称を言います。
このハムストリングスに関しても鍛え方は色々とあるのですが、個人的には大殿筋のトレーニングと同じヒップ・レイズをお薦めします。
このヒップ・レイズはお尻だけでなくハムストリングスも同時に鍛えられるのでとても良いんです。

筋トレはやり過ぎても怪我に繋がりますしバリエーションが多くても毎日続かないので、或る程度種類は絞って毎日継続することが効果的と言えるでしょう。
勿論、筋肉痛が出るようなハードな筋トレに関しては回復期間を設けた方が良いですが、ここで紹介する筋トレ程度であれば筋肉痛が出ない程度に毎日やっておいた方が良いと個人的には思います。(毎日基礎的な運動として歩いていた方が良いようなものです)

ちなみに2022年2月現在、私は以下の筋トレを毎日実施しています。

1. プランク (30秒×2セット)
2. サイド・プランク (片側ずつ30秒×2セット)
3. ヒップ・レイズ (30秒×2セット)
4. ダイアゴナル・プランク (30秒×2セット)
5. スタンディング・ニー・レイズ (10セット)
6. ベント・ニー・シットアップ (30回×2セット)
7. バック・エクステンション (30回×2セット)
※リンク先は各トレーニングのGoogle検索結果画面です。

この程度ならば15~20分あれば全部できますので、毎日でも何とか続けられると思います。
その他、私が何度か出場したロードレースを主催するUP RUNのマラソン豆知識のページにも体幹トレーニングとその方法について記述がありましたので、以下ご参考に掲載しておきます。

家でもできるマラソントレーニング!!体幹を鍛えてマラソン大会に出場しよう! by. UP RUN


② 骨盤の前傾姿勢を保つ

体幹の筋肉が或る程度鍛えられてきたら、次に骨盤の前傾姿勢を意識しながら走ってみると良いと思います。
勿論、体幹の筋肉トレーニングをしないでトライしてみても良いと思いますが、背筋~腸腰筋~大殿筋辺りまでがバランス良く鍛えられていないと、最初はそれっぽく走れるものの段々とフォームが崩れて骨盤が起きてくることが想定されます。
なので、可能であれば体幹トレーニングを実施して2,3ヶ月位経ち、しっかりと筋肉が充実してきたタイミングで実施してみると良いと思います。(勿論、並行してやってみて段々と出来てくるのを楽しみながら実施するのもありだと思います)

やり方としては①でも述べましたが、直立してからお尻を引き上げつつ腰を前方に押し出すようにします。
そうすると身体の重心が前に行き重心線が前方に傾くため、自然と脚が前へ出ることが理解できると思います。
その姿勢を保ちながら、上半身を横揺れさせないように真っ直ぐに安定させ、走り続けるだけです。
拍子抜けしてしまうかもしれませんが、これだけです。
ちなみにコツとしては以下が挙げられます。

1. お尻が下がらないように注意(お尻が下がると骨盤が起きてきます
2. 上体が反らないように注意(お腹より胸が後ろではダメです。胸は前に出しましょう
3. 顎が上がらないように注意(顎が上がると上体が反ってきます

個人的に、これらを意識するだけでだいぶ違ってくると思います。


③ 振子の動きを意識した腕振りを

感覚的にこれが一番難しいのではないかと思いますので、最後に持ってきました。
体幹の筋肉を使って骨盤を前傾させたフォームで走れるようになると、効率良く前に進めることが分かりました。
また、その際に大殿筋を使って足を素早く引き上げ、腸腰筋も伴って体幹から素早く脚を前に繰り出せるようになると、その動きに連動して上半身(特に胸~腕の付け根辺り)も振子のように振れる感覚が分かってくると思います。
これが振子のような腕振りの正体であり、腕を振らなくても腕が振れるという一見矛盾である言葉の正体でもあります。

個人的にこの感覚を理解するのには多少時間が掛かりました。
しかしながら無駄な力みを抑えてできるだけランニングエコノミーを高めるには、この肩や腕に力をいれずに走ることも少なからず寄与してくるものだと思っています。
筋肉と言うのは緊張すればする程エネルギーを消費するものなので、いかに緊張させないかがポイントです。
そうすることで、そこに使用するはずだったエネルギーを体幹の筋肉の張力を維持させるために使用できますから、更に速く前に進むことができるようになるでしょう。
故に最後にこのポイントを持ってきました。

👟まとめ

① 楽に速く走るためには、ランニングエコノミーが高いフォームが最適
② 骨盤が前傾した腰高フォーム、体幹が安定した姿勢の良いフォーム、肩や腕の力を抜いた力感のないフォームが主として挙げられる
③ これらのフォームに近付くにはまず体幹の筋肉を鍛え上げ、それから各々の部分を意識して練習する


いかがでしたか?

よく聞くフォームでも内容を解明していくと、意外と単純と言うか理論としては簡単で分かり易かったのではないでしょうか。
腰高のフォームも長い距離を走るのにはそれなりにトレーニングが必要となりますが、ランニングを始めたばかりの方でも少し鍛えれば短い距離ならば体感できるのではないかと思います。
ぜひ体幹の筋肉を鍛えて、楽に速く走れるフォームを身に付けていただけると私としても嬉しいです。

また、最後になりますが記録更新やより速く走るためのトレーニングを続ける際に心掛けたいことや習慣などをまとめた記事もありますので、お時間のある時に合わせてお読みいただけますと幸いです。
以下にご紹介しておきますね。

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記録更新を目指す市民ランナーが心掛けたい3つの心得を含む7つの習慣

また、10km40分切りを目指している方がいらっしゃいましたら、こちらもぜひ目を通していただければと思います。

– 関連記事 –
市民ランナーが10km40分切りを達成するための練習法

これらの情報が皆さんのお役に立ち、記録向上や楽しいランニングライフに繋がれば嬉しいです。

最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。

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